§ 「デジャ・ビュ」について1

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「デジャ・ビュ」

 

 

 

 初めて来た場所なのに、何となく昔来

 

たことがあるような気がするという体

 

をすることがあります。

 

 このような現象は、「デジャ・ビュ」

 

(既視体験)と呼ばれています(※逆に

 

まで来たことがある場所なのに初め

 

たように感じることを「ジャメ・ビ

 

ュ」と言います。)。 

 

 

 

 何が原因でこのような現象が起こるの

 

でしょうか?

 

 

 

 一般に私達の記憶には、いつ、どこ

 

で、何をしたのかという要素が含まれ

 

いるのですが、これらの要素を一つ残ら

 

ず、完全に覚えているということはそれ

 

ほど多くありません。 

 

 

 

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 例えば、自分がまだ小さかった頃に、

 

ある、どこかの場所で、まだちっちゃな

 

で、たどたどしく一匹の像の絵を画

 

に描いたという記憶を持っていた

 

す。

 

 

 さて、そこまでは思い出せるのです

 

が、それ以上のことはいくら考えても思

 

出せません。

 

 

 それが一体何歳の頃の話であった

 

か?

 

 どこでそのような絵を描いたのか?

 

 季節はいつ頃であったのか?

 

 誰かがその場に一緒にいたのか?・・

 

 

 詳しく思い出せないことが幾つか出て

 

ることがあります。

 

 デジャ・ビュは、このように忘れてし

 

まっている部分がたくさんあり、詳細な

 

思いはないが、いくつかの断片的な

 

像の記憶が残っているときに起こるもの

 

だとわれています。

 

 

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 例えば、小さい頃に父親に連れられ、

 

ある町に行ったことがあり、もはや町の

 

前も雰囲気もほとんど思い出せない

 

態にあるのですが、いくつかの場面の映

 

の記憶だけが残っていたとします。

 

 すると、今まで一回も自分は行ったこ

 

とのない町に初めて行き、上記の思い出

 

にある映像と似た風景を見た際に、初め

 

て来た場所であるにも関わらず、何とな

 

く、以前に来たことがあるような感じが

 

するということが起こるのです。

 

 

 

 このように、目の前の場面と、記憶に

 

残っている場面との記憶が合わさると、

 

同じものでなくても、ただ似ている

 

というだけで、いつ、どこで体験したの

 

かということが分からないまま、何とな

 

く同じ場面を見た・同じ経験をしたとい

 

う気がするという感覚(既視感)を抱い

 

てしまうのです。

 

 

 また、これは、本で見た写真や、映画

 

で見た映像の記憶でも起こることなの

 

す。

 

 これらのことは、私達の記憶には、か

 

なり不正確な要素があるのだというこ

 

示しています。

 

 では、これらの記憶の仕組みを覚えた

 

上で、続いて、「催眠」という特殊な状

 

態での記憶の想起について考えていきま

 

しょう。

 

 

 

 

◆ 記憶の想起 

 

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 実は、人間は、催眠状態に入ると、信

 

頼している人物の命令や、人からの暗

 

逆らおうとする意思が非常に弱くなっ

 

てしまうということが、これまでの研究

 

明らかになっています。

 

 

 

 ここでは、まず、「催眠状態での記憶

 

の想起に関する年齢退行」ということ

 

いて見ていきたいと思います。

 

 年齢退行という状態は、簡単に説明し

 

ますと、人が他の人に暗示を掛けること

 

よって、催眠中の人の頭の中の状態を

 

実際の年齢よりも若い時に戻すことを

 

す。

 

 

 このように若い時代に戻ったという暗

 

示を受けることによって、催眠前には思

 

出せなかった若い頃の出来事の記憶

 

ることがあるのです。

 

 

 しかし、これにはいくつかの大きな問

 

題があります。まず、古い記憶が全て正

 

思い出せるわけではないというこ

 

です。

 

 

 前述のとおり、記憶が歪んで蓄えられ

 

ることがあります。また、ほとんどの場

 

合、眠によって蘇った記憶が本当にあ

 

ったことであったか否かを検証するこ

 

が非常に困難であり、もはや確かめる

 

とができないということがほとんどなの

 

す。

 

 

 

 また、催眠状態になると、自分が実際

 

に体験したことと、自分が実際には体験

 

いないこと(例えば、人から聞いた

 

話や本に書いてあったこと、また、頭の

 

中で想したことなど)を混同してしま

 

うということが起こりがちなのです。

 

 その場合、(本人には全くその気はな

 

いのですが、)結果として、全くのでっ

 

を話してしまうということが起こ

 

てしまいます。

 

 

 さらに、催眠前には、本当に起こった

 

かどうかあまり自信を持てなかったこ

 

っても、催眠後には、本当に起こ

 

ことに間違いがないと自信たっぷりに

 

をしてしまうということが、非常に

 

多いことがこれまでの研究で判明して

 

す。

 

 

 

 最後の問題としては、催眠中に蘇った

 

記憶について、話しをする際に、本人は

 

言っているという自覚がないので、

 

催眠から覚めた後に、本人も自分自身が

 

眠中に話した出来事、つまり「蘇っ

 

た」記憶が実際にあったことだと確信し

 

てしうという問題があります。

 

 

 このような記憶の特性を理解しないま

 

ま、被験者の証言を鵜呑みにしてしまう

 

と、当然のごとく間違った結論に至って

 

まうのです。

 

 

 

 私達人間は、このような研究結果を見

 

るときに、他人の記憶については、「な

 

ど、記憶というものは案外不正確な

 

のなんだなぁ」と容易に納得すること

 

できます。

 

 

 しかし、自分自身の記憶については、

 

かなりの自信を持ってしまっているもの

 

です。

 

 ですが、自分自身の記憶も他の人と同

 

様に、不正確なものであるということを

 

える必要があります。

 

 

 

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