臨死体験と催眠についての考察

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 臨死体験についても同じようなことが言えます。

 

 臨死体験において言えることは、自分の体の状態が、死に近づいただけであ

 

て、当人が実際に死んだわけではないということです。つまり、その体験が

 

本当に死に掛けの状態(臨死の状態)の中で見たものであるのか、はたまた、

 

意識を取り戻す直前に見たものであるのかということを断定することができな

 

い、即ち、いつ見たのか判断できないと言うことが問題となるのです。

 

 

 

 また、臨死体験で見るビジョンの内容については、複数の体験者に共通する

 

ころが確かにあるのですが、それよりも、体験者の年齢や、民族性などに依

 

存している部分が多いことも判明しています。

 

 

 

 

◆国と年齢の問題

 

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 例えば、臨死体験をしたアメリカ人の約65%に当たる人が、自分の意識が

 

自分の体から離れるという体験(体外離脱体験)をしているのに対し、インド

 

人の臨死体験者には、ほとんどそれがありません。逆に、インド人の体験者の

 

実に半数もの人が閻魔大王のような帳簿を持った人の前へと引きずり出される

 

という体験をしているのに対し、アメリカ人の体験者の内、このような体験を

 

した人の割合はほぼ0%です。また、日本やアメリカでは、それまでの人生

 

走馬灯のように回顧する人が多いのに対し、インドの人はほぼ0%です。

 

 

 民族ごとに行く死後の世界が違うわけでは絶対にありえませんので、生前に

 

刷り込まれた思い込みが臨死体験に反映されているのだと考えるしかありま

 

せん。

 

 

 

 また、死後の世界に行くと、先に亡くなった親戚や友人が出迎えてくれたと

 

証言する体験者が多いのですが、臨死体験を起こしたのが子供である場合、自

 

分の周りで亡くなった人がまだとても少ないため、学校の先生や友達などま

 

だ、現在生きている人々が臨死体験に現れることが多いのです。

 

 これらのことから考えると、このような臨死体験は、意識を失っている間に

 

脳内で発生した一種の幻影なのではないかとも考えられます。

 

 

 

 

◆人為的な臨死体験

 

 

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 超心理学者のスーザン・ブラックモアは、1950年代にイリノイ大学で行

 

われた、精神神経症の治療実験に注目しました。この実験では、酸素と炭酸ガ

 

スの混合ガスを患者に与え、その効果を観察したというものですが、患者に

 

は、「明るい光を見た。」とか「完全なる理解と神との調和を体験した。」と

 

か「体外離脱を起こした。」いった臨死体験者とそっくりなビジョンが現れ

 

たということです。この報告を元にして、臨死体験はこういった脳内のガス濃

 

度や、脳内物質によって引き起こされたものではないかと、ブラックモアは仮

 

説を立て、推測しています。

 

 また、実は、ブラックモア自身も大麻を吸った際に、体外離脱経験をしたと

 

のこですが、離脱中に見たはずの風景は、後で調べたら、現実とは全く違っ

 

ていたと報告しています。

 

 ブラックモアの仮説が正しいかどうかはまだ分かりませんが、一足飛びに

 

「体外離脱はあるのだ。なぜならそのような証言をする人がいるのだから。」

 

という理論は飛躍しすぎていると言えるでしょう。

 

 

 

 

 ◆最後に・・・

 

 

 

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 最後にもう一つ、人間の記憶について、大事な要素があります。

 

 

 

 それは、外れた情報は忘れ去られるということです。

 

 占い師のやり方をみればよく分かりますが、彼らは、非常に多くの予想、予

 

言を語ります。毎年、何十、何百もの予言を発表しているならば、そのうちの

 

いくつかは、運よく事実と一致する場合があります。

 

 的中した予言は、占い師自身が宣伝したり、また、マスコミで取り上げられ

 

たりした場合に、多くの人々の記憶に残ります。

 

 しかし、一方で、それ以外の外れた大多数の予想、予言は評判にならず、忘

 

れ去られていきます。そのため、あたかもその占い師が、高い確率で占いを的

 

中させているかのような錯覚を抱いてしまうということが起こってしまうの

 

です。

 

 統計学者は、この現象を有名な自称予言者から名前を取って、「ジーン・デ

 

ィクスン効果」と呼んでいます。

 

 

 

 また、もう一つ付け加えるならば、このような超常現象の世界には、プロの

 

詐欺師が存在するということです。

 

 彼らは、それで生計を立てているプロのイカサマ師であり、残念ながら、そ

 

ういうプロの目で見ると、一般の人々(これは心理学者も含みます。)は全く

 

のド素人なのです。

 

 そのため、金儲けや売名行為のために、あえて事件をでっち上げる輩が多い

 

とも覚えていただきたいと思います。(このことについては、※注の資料な

 

どを参考にしてください。)

 

 

 

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◆参考資料

 

 

 

※注の参考資料

 

 

 

 「奇妙な理論」       М・ガードナー著 教養文庫 社会思想社

 

 「科学を名乗った嘘と間違い」 市場泰男訳・編 教養文庫 社会思想社

 

 「超過科学をきる」      テレンス・ハインズ著 化学同人

 

 「大予言の嘘」        志水一夫著 データハウス

 

 「超能力を科学する」     安斎育郎著 かもがわ出版

 

 

 

 

本文の参考資料

 

 

 

 「いまどきの神サマ」     別冊宝島14 宝島社

 

 「トンデモ超常現象99の真相」と学会著 洋泉社

 

 「目撃者の証言」       E・F・ロフタス著 誠信書房

 

 「不思議現象 なぜ信じるのか」菊池聡編著 北大路書房